2014年3月13日木曜日

Jeffrey Preston Bezosの視点




アマゾンはもはや単なるショッピング・サイトではない。クラウドサービス「AWS」(Amazon Web Services)でテクノロジー業界を引っ張るIT企業でもある。AWSは、インターネットを通じてアマゾンのサーバーでアプリケーションを作動させたり、データを保存したりできるいわゆるクラウド・コンピューティング・サービスだ。
料金は水道や電力と同じ従量制で、しかもその料金レベルは伝統的なレンタル・サーバーなどに比べ驚異的に安い。これは、長期的な視点を持ってベゾスが意識的にAWSを赤字覚悟の低料金にしたからだ。 
(担当者はAWSの一つの)EC2インスタンスの料金として1時間15セントを提案した。これなら収支とんとんになると考えたからだ。だが、スタート前のSチーム会議で、これをベゾスが10セントに引き下げてしまう。「その値段だと、長期にわたって赤字が続くことになりますよ」とヴァン・ビョルンが念押しするが、ベゾスは「上等だ」と取りあわなかった。 ――『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』第7章より 
なぜ、競合がまだいない段階で、最初から赤字覚悟の安い値付けをするのだろうか。 ジェフ・ベゾスは株主に対して、「スティーブ・ジョブズの失敗をくり返したくない」と回答した。このベゾスの発言は、『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』で紹介されるまで知られていなかったが、アマゾンの戦略を理解するうえで重要なヒントになる。 
iPhoneはすばらしい製品であり、ユーザーはジョブズが設定した値段を喜んで支払う。何も問題はないように見えるが、ベゾスに言わせればそれが失敗なのだ。つまりこの分野でiPhoneがそれだけの利益を上げられたのであれば、利益率を少々削れば価格優位な製品が作れると広く認識させてしまった。グーグルがAndroid OSを無料でメーカーに提供開始すると同時に、スマートフォン市場は一気に激烈な競争の中に投げ込まれた。アップルは天文学的なキャッシュを社内に積み上げることには成功したが、スマートフォンのシェアではあっという間にAndroidに敗れた。 
通常、価格競争はある分野で優位に立った企業に対して後発企業が仕掛けるのが通例だ。 しかしアマゾンは、「先制価格戦争」あるは「予防的価格戦争」を仕掛ける。
新事業のスタートの際に意識的に赤字覚悟の料金を設定する(ちなみに、その時点で競争相手は存在しないから被害を受ける相手もいないので反トラスト法が定める不正競争行為に該当しようがない)。 

0 件のコメント:

コメントを投稿